昨今、企業を取り巻く状況は、資源価格の高騰、物価上昇、為替の変動、人手不足や高まる地政学的リスクといった様々な困難に直面しており、小売業、通販業界においても多くの課題が存在しています。
本年3月に大きく取り沙汰された紅麹問題は、機能性表示食品そのものの販売に大きな影響を与えました。対応策として健康被害報告が義務化され、事業者の負担が増えることとなりました。また、2024年・2030年物流問題に関しては、「送料無料表示」への影響や、再配達の削減、物流コスト上昇など、今後も引き続き大きな課題です。
そして、ECにおけるセキュリティ問題に関しても常に対応を迫られている状況です。JADMAとしてもこの3点は喫緊の課題としてとらえ、法規制への対応含め、皆さまと協力して情報交換をし、課題解決に繋げたいと考えています。
現在、通販業界の総売上高は13兆円の規模に達しており、コロナ禍以降、さらに利用者が増え、社会的な重要性、そして社会貢献における責務を担う業界となっています。
変化の激しい世の中において、通販業界にとって、最も大切で原点でもある、「誰もが安心して利用できる『安全で健全な通販』であること」を今一度見つめ直し、構築することが重要であると捉えています。その上で、JADMAのコンセプトである「楽しく、便利な通販」「世の中をもっと楽しくする通販」を目指してゆきたいと考えています。
また、重要性と責務が増す通販業界にとって、社会に役立つ、社会課題に貢献できる業界でありたいと考えています。今後ますます、生成AIやチャットGPTなどIT技術の進化や変化が加速的に進みます。あらゆる面で効率化や利便性が高まり、通販のあり方も、それにともない進化していく事が重要になります。 その合理化の反面、少子化、高齢化、地方の過疎化、震災や災害への対応などの社会的な問題や課題も多く存在し、お年寄りや、困っている人たちへの対応も通販業界として同時におこなわなければなりません。業界として、人の心に寄り添い、人にやさしい「通心販売」(心の通う通販)は社会的責務として重要になります。
また、サステナブルな世の中の機運が高まり、動きが加速しています。配送や資源の有効活用含め、CO2削減、カーボンニュートラル推進などの環境問題において、業界全体での推進・貢献が、ますます重要になってきます。
今後、「人にやさしく、地球にやさしい」をベーステーマにして、社会に貢献できる業界の位置づけ、目指す方向を築いてゆきたいと考えています。 昨今の様々な課題や今後の方向性など、各社個々での解決が難しい状況となっています。業界唯一の自主規制団体として、消費者保護の観点と業界発展の観点で、今後ますますJADMAの役割やリーダーシップが重要になると考え、引き続き、皆さまに役立つ情報の発信や課題解決に向け動いてまいります。そして、皆さまのご協力を得ながら、通販業界の発展と各企業の繁栄に繋げてまいります。
公益社団法人日本通信販売協会会長
2024年6月吉日