本人の死亡による家族からの 個人情報削除の申し出への対応

はじめに
高齢の家族が死亡したことにより「当該家族の顧客情報の削除の申し出」がされることがあります。その手続きを行う際、登録されている本人の申し出ではないために、申し出を行った方と削除する当該家族との関係を証明する書類の提出を求めるケースがあります。ところが、申し出を行った方から、手続きが煩雑だと苦情になるケースがあり、今回はこういった、家族の死亡による個人情報の削除について考えてみたいと思います。
相談事例
最近、個人情報の削除の依頼が増えている。特に登録者の死亡による家族からの削除依頼である。現状、本人との関係を示す書類を添付して削除申請を提出してもらい、手続き完了後、その旨会社から連絡している。申し出をした家族からは、手続きが面倒と嫌がられるケースが多く困っている。他社はどのように行っているか? また、嫌がられない適切な方法はないだろうか?
注:相談の内容に沿って、文中では「削除」という表現を使用していますが、個人情報保護法上、正しくは「消去」が正しい使い方になります。
助言
厳格な形式にこだわらなくても構わないのではないか
「本人の死亡による家族からの削除の申し出」への対応について、その手続き等を明文化したガイドライン等はない。各社の判断(手続きのルール)で行っているのが現状だ。もっぱら御社のように、削除申請の書類提出と「登録者本人との関係を証明する書類等を求める」といった方法が多いのではないかと考えられるが、申し出者と本人との関係を証明するエビデンス等をどこまで厳格に求めるかということになる。
「登録者が死亡した」という理由での削除依頼の場合、あまり厳格な形式にこだわらなくても構わないのではないかと助言した。
相談室長より
通常の手続きとは異にした柔軟な対応を
助言のとおり、「本人の死亡による家族からの削除の申し出」について、その対応等が明文化されたものは残念ながら存在していません。したがって個人情報保護法の「保有個人データの利用停止等」及び「開示請求等に応じる手続き」のガイドラインやQ&Aに示された内容を参考にして、運用を考えるということになります。
当該ガイドラインやQ&Aには、代理人であることの確認方法として、運転免許証、健康保険の被保険者証、マイナンバーカードの表面、パスポート等。このほか「代理を示す旨の委任状(親権者が未成年の法定代理人であることを示す場合は、本人及び代理人が共に記載され、その続柄が示された戸籍抄本、住民票の写し)」と例示されています(法第32条関係ガイドライン事例2)。
一方、「請求等に応じる手続を定めるに当たっては、当該手続が、事業の性質、保有個人データの取扱状況、開示等の請求等の受付方法等に応じて適切なものになるよう配慮するとともに、必要以上に煩雑な書類を書かせたり…(中略)…本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。」
また、「確認の方法は、…(中略)…本人確認のために事業者が 保有している個人データに比して必要以上に多くの情報を求めないようにするなど、本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなくてはならない。」という配慮義務も同ガイドラインに示されています。
ここで認識していただきたいことは、個人情報保護法上、「利用停止等の請求(開示も含む)に対する手続や、その確認方法」は、「定めることができる」という、あくまでも任意の規定であること、また、その示されている方法は例示であるということです。
つまり、事業者の裁量の余地が大きい規定であるということです。ついては、死亡事由による削除については、通常の手続きとは異にした過重にならない方法を定める等、柔軟な対応の検討を望むところです。