No.1表示における留意点について

はじめに
近年、売上額のような客観的なデータに基づかない顧客満足度、品質満足度などのイメージ調査でのランキングトップを標榜する「No.1表示」に対する措置命令が急増しており、昨年9月には、消費者庁がNo.1表示に関する実態調査報告書を公表するとともに景品表示法上の考え方を示しています。これまでも会員企業のコンプライアンス部門の方からNo.1表示の取扱いに関する質問を受けることもあったため、今回は公表された報告書から気をつけるべき点などを説明します。
相談事例
NO.1表示を行う場合の根拠の確認について社内周知したいので、特に気をつける点などのアドバイスをお願いしたい。
助言
第三者の主観的評価に基づくイメージ調査は特に内容の詳細な確認が必須
今回の消費者庁の調査で、消費者が新しい商品やサービスを選ぶ際に「NO.1表示」などの高評価の表示が商品等の選択に「かなり影響する」、「やや影響する」とした回答が約5割を占めていることから、多くの消費者にとっては意思決定するための有益な情報であると認識されているということになります。これだけ多くのNO.1表示が氾濫していると、逆に「あまり影響しない」とする消費者がもう少し多いのではないかとも思うものの、実際に商品サービスを利用している人の評価が「NO.1」とされるならば、競合他社に比べて優れているのだろうと多くの消費者が認識するということなのでしょう。
今回の調査報告書では、NO.1表示が合理的な根拠に基づくものと認められるためには、次の4点を満たすことが必要であるとされていますので、これらを踏まえて、調査の質問項目、比較対象にしている競合商品・サービスの内容などを詳細にチェックするようにしてください。
① 比較対象となる商品・サービスが適切に選定されている
インターネット検索により、単に検索結果で上位表示された同種商品等を比較対象として選定しているだけで、市場における同種商品等の一部又は全部を比較対象に含めないまま調査を行っている場合も問題になるとされているので注意を要します。
② 調査対象者が適切に選定されている
表示内容から認識される調査対象者を選定する必要があり、例えば「顧客満足度NO.1」と訴求するなら、実際にその商品・サービスを利用したことがある者を対象にしなければならず、利用したことがない者に対して、単にWebサイトの印象を問うようなイメージ調査を根拠とするのは例え、この旨の注記があっても問題となります。
③ 調査が公平な方法で実施されている
この点はこれまであまり重要視されていなかったかもしれませんが、例えば「おすすめしたい」商品を選択させる際に、自社を常に最上位に固定して選ばれやすいように誘導することも、恣意的な調査として問題があるとされています。最も上に挙げられている項目が選択されやすいとされているからでしょう。選択肢を列挙する場合も並べ方に気をつけなければいけません。
④ 表示内容と調査結果が適切に対応している
例えば、売上額比較等でNO.1を訴求し、あたかも直近の調査結果であるかのように表示しているが、実際には3年前のデータでの比較であったというようなもの等が問題になるのでしょう。
調査役より
調査の質問項目や競合商品の内容はしっかりと把握を
今回の報告書には、調査会社等との取引実態に関して、調査結果が悪ければ費用は一部返金する、1位の結果が出ない場合には1位が獲れるまで追加の費用はかからない、弁護士のリーガルチェックを受けているので根拠として問題はない等の勧誘を受けた例があったことが記載されています。売上を伸ばさんがためにこういった際どい提案、不適切な勧誘行為をする会社がそれなりに存在するということです。他社も使っているし実績もある調査会社なので任せても大丈夫だろうと安易に考えずに、広告主として、調査の質問項目の内容やどのような競合他社商品との比較なのかなどをきちんと把握した上で、合理的な根拠となり得るかを判断したいものです。