通販の歴史

最初の通信販売

最初の通信販売

 日本で最初の通信販売というとトウモロコシの種子を思い浮かべる人も多いと思います。黒住武市氏の『日本通信販売発展史』による1876(明治9)年4月の『農業雑誌』に掲載された玉蜀黍(トウモロコシ)の種子の広告が広く知られています。しかしながら当時の種子は農業という産業にとって重要かつ不可欠な産業財といえます。消費財のB2Cの通信販売はいつからあって、どんな商品であったのかについては同書では明らかにしていません。

 現在の特定商取引法の定義では通信手段による注文の申込となっています。当時は郵便制度が開始された直後の時期で、郵便による注文が当時の通信販売の判定基準となります。これによると、1875(明治8)年の輸入ビールの広告が消費財の通信販売広告の最初のものと判断できました。

 その広告は、「舶来最上大瓶麦酒(ビイル)一(ダース)十二本 代二円十五銭 右一(ダース)以上御用之節は郵便にて御申越次第御宅へ差上可申候 但万に一ツ品味御気に入不申候はば残品御口切無之分は代金返納引請可申候 新橋川岸南金六町四番地 氷店新金屋儀兵衛」(『讀賣新聞』1875年6月24日2ページ)というものです。最初の通販広告にして、そこには満足保証も記されていました。通販の始まりとして興味深いものといえます(なお、この研究論文そのものの入手については、協会事務局にお問い合わせください)。

東洋大学経営学部 教授 長島 広太