広告表現の評価検証(2/2)

問題ある広告手法類型
調査を通じて収集・選定した広告について、法令順守や消費者保護の観点から特に問題があると思われる広告手法を検討し、類型別にまとめた。
1.不適正な比較広告・No.1表示
「○○ランキングNo.1」などと、比較広告によって商品・サービスの優良性・有利性を訴求する広告手法について、比較の根拠となる調査の内容が恣意的であるにもかかわらず、あたかも公平な調査に基づく比較であるかのように表示しているケースが散見された。
特に、Webサイトや商品の印象に関する調査(いわゆる「イメージ調査」)であるにもかかわらず、あたかも購入者や利用者の評価や満足度に関する調査であるかのように表示し、商品・サービスの優良性・有利性を実際よりも著しく強調して表示する場合には、不当表示に該当するおそれがあり、注意が必要である※1。
また、自社の商品・サービスがNo.1となるよう自社に有利な調査の条件等を設定する等の恣意的な調査(いわゆる「結果ありきの調査」)であるにもかかわらず、公平な調査に基づくかのように表示する場合には、調査の条件等を正確かつわかりやすく記載しない限り、不当表示に該当するおそれがあり、注意が必要である※2。
なお、比較広告やNo.1表示については、行政のガイドライン等の資料が公開されているので必ず参考にしてほしい※3。
2.虚偽が疑われる商品の体験談や使用者の写真
感想や、感想を併記した人物の画像を商品・サービスの体験談や使用者の画像であるかのように表示して商品・サービスの優良性を訴求する広告手法について、実際には そのような体験談や使用者の画像は実在しないフィクションであるにもかかわらず、あたかも真正の体験談や使用者の画像であるかのように表示していることが疑われるケースが散見された。
特に、「イメージです」などと注記を表示して、体験談や使用者の画像がフィクションである旨の説明を表示している広告も散見されるが、広告を目にする一般消費者にとって体験談や使用者の画像がフィクションであることは想定しないことであり、体験談ではないことや使用者の画像ではないことをわかりやすく記載しない限り、不当表示に該当するおそれがある※4。
一般的に、体験談や使用者の画像といった広告手法は、実際に文章や画像に示された効能効果があるかのように訴求する力が強いため、商品・サービスの優良性を過剰に強調したり、実在しない体験談をねつ造することがないよう、留意すべきである。
3.誤認を与えるカウントダウンタイマーや在庫表示
「本日受付終了まで○時間○分○秒」と記載したカウントダウンタイマーや「残りわずか○個!購入を急いで」と記載した在庫表示など、販売期間や販売数量を限定することにより商品・サービスの優良性・有利性を訴求する広告手法について、実際には、購入に期限はなくカウントダウンは無意味であったり、販売状況に関係なく常に変わらない在庫数が表示されるなどのケースが散見された。
カウントダウンタイマーを表示することにより、あたかも表示された期限以降には商品・サービスを購入できなかったり特典が得られないかのように表示しながら、実際とは異なる場合には、不当表示に該当するおそれがある※5。
在庫表示についても、あたかも相当程度多数の注文を受けているかのように表示しながら、実際とは異なる場合には、不当表示に該当するおそれがある※6。
カウントダウンタイマーや在庫表示などの広告手法は、消費者に購入を焦らせることがあり、表示について一般消費者を誤認させるおそれがあるため、商品・サービスの優良性・有利性を過剰に強調するものとならないよう留意すべきである※7。
※1 消費者庁 株式会社バウムクーヘンに対する景品表示法に基づく措置命令 (令和5年6月14日)、消費者庁 株式会社PMKメディカルラボに対する景品表示法に基づく措置命令 (令和4年6月15日)
※2 消費者庁 株式会社バンザンに対する景品表示法に基づく措置命令 (令和5年1月12日)、消費者庁 株式会社5コーポレーションに対する景品表示法に基づく措置命令 (令和5年3月2日)
※3 「比較広告に関する景品表示法上の考え方(比較広告ガイドライン)」(消費者庁 平成28年4月1日)においては、①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること、②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、③比較の方法が公正であることが不当表示とならないための要件として挙げられている。
また、「No.1表示に関する実態報告書」(公正取引委員会事務総局 平成20年6月13日)においては、①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること(=当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること、又は、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法等で実施されていること)、②調査結果を正確かつ適正に引用していることが不当表示とならないための要件として挙げられている。
※4 東京都 ツインガーデン株式会社及び株式会社エムアンドエムに対する景品表示法に基づく措置命令 (令和5年3月28日)
※5 消費者庁 チケット転売の仲介サイト「viagogo」に関する注意喚起 (令和元年9月13日)
※6 消費者庁 葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とする機能性表示食品の販売事業者16社に対する措置命令 (平成29年11月7日)
※7 「景品表示法検討会報告書」(消費者庁 令和5年1月13日)において、ダークパターンの例として「例えば、『残り○分』などと、あたかもその後の短期間のみに適用されるお得な取引条件であるかのように表示しているが、実際には当該期間経過後も同じ条件が適用されるもの」は「現行の景品表示法の有利誤認として規制し得ると考えられる」と指摘されている。
『2023年度 通販広告実態調査報告書』は こちらよりご覧ください。