(1/2)転売禁止を理由とする販売拒否について

はじめに
フリマアプリやオークションサイトの浸透により、消費者間取引(CtoC)を行うことが容易になっている一方で、転売問題に悩んでいる通販事業者も多い。転売を禁止できるか、また転売目的を理由に購入を拒否できるかなどについて解説する。
1.背景と問題の所在
転売問題の背景には、「シェアリング」(CtoC)をめぐる流通の変革があるとされている。すなわち、ヤフオク、メルカリに代表されるフリマアプリ、オークションサイト等のユーザー同士のデジタルマーケットの広がりによって、買った商品を次々と手放し、新たな商品を手に入れるという生活スタイルが一般消費者の間に浸透してきている。
人気商品やイベントのチケット、限定グッズ、ゲーム等は従来から問題となっていたが、コロナ感染症に伴う日常品の買い占めにより、一般消費者や必要な需要者に商品が届かない等の事態や高額転売が社会問題となるに至っている。
通販事業者にとっての課題は、転売を禁止できるか、転売目的の申込み者に対して転売目的を理由に購入を拒否できるかにある。
通販事業者の多くは、一般消費者を相手に販売していることが多いことから、一般消費者に対する販売を念頭に置くことにする。もちろん、BtoBの通販事業者もいるが、その場合は、事業者の事業者に対する販売相手先の制限という独禁法上の問題として議論されることになるので、区別して扱うことがわかりやすい。
2.転売の自由
購入者が一般消費者であるとすると、転売は、所有物の処分の一形態であることから、転売の自由がある。事業者であったとしても、営業の自由の一環として、転売できることに変わりはない。
そうすると、転売の自由を制限できるのは、法律による規制である。この場合の例としては、チケットやマスク、消毒液等についての、法律による規制がある(「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(略称チケット不正転売禁止法)や「国民生活安定緊急措置法」(なおマスク・アルコール消毒液については既に解除済)。
転売品が古物に当る場合は、古物営業法の規制が及ぶ。古物とは、一度使用された物品(政令で定めるものを除く)、若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの、又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう(古物営業法第2条1項)。
最初から転売目的で購入された物は、一度使用された物ではなく、かつ使用のために取引された物ともいえないので、古物に該当しない可能性がある。この点は、古物営業法には罰則規定もあるので、転売する者は注意が必要である。
このような法律等の規制が及ばない場合は、一般消費者が転売することは原則として自由ということになる。
3.転売禁止を契約内容として販売することはできるか
通販事業者が転売しないことを条件として、売買契約を締結することはできるか。例えば、規約等に「当サイトでは、購入した商品をヤフオク・メルカリ等に転売する目的でのご購入は固くお断りしております。転売目的だと判断した場合には、注文を全て取り消しさせていただきますので、あらかじめご了承ください。」と記載しておいたら有効か。
基本的に、事業者には取引の相手方選択の自由があるので、一般消費者向けに販売することは自由である。そうすると、一般消費者の転売を制限することができるか。消費者契約法10条に違反しないかが問題となる。消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する条項を無効とするものであるところ、一般消費者が一旦使用した物の転売を禁止するものではなく、転売目的での購入を制限するものであり、それはもはや一般消費者の保護という領域を超えたものと考えられるので、その有効性に問題はないと考えられる。
(続く)