(3/4)一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(いわゆるステマ告示)及び運用基準について

はじめに
前号では、ステルスマーケティング告示の運用基準のうち、事業者が第三者をして行わせる表示の中で、明示的に依頼・指示していない場合について解説した。今回は、事業者が第三者をして行わせる表示の中で、第三者の表⽰が事業者の表⽰とならないものについて解説する。続いて、事業者の表示であることが明瞭でないもの、明瞭であるものについて解説する。
1.ステルスマーケティング告示の運用基準(続き)
1.1 第三者の表⽰が事業者の表⽰とならないものについての考え⽅
事業者の表示とならないということは、裏を返せば、第三者の完全な自由意思に基づく表現ということになる。第三者の表示が事業者の表示とならないものとして、具体例を9つ挙げる。
①第三者が、⾃主的な意思に基づく内容としてSNS等に表⽰(投稿)をする場合(複数回の投稿も含む。)
②第三者が⾃主的な意思に基づく内容として、ECサイトのレビュー機能を通じて商品等のレビューの表⽰(投稿)を⾏う場合
上記の例2つは、客観的状況に基づき第三者の自主的な意思と認められる場合は、事業者の表示にはならない。
③事業者が、広告⽬的でない単なるプレゼントをした結果、受け取った第三者が⾃主的な意思に基づく内容として表⽰を⾏う場合
こちらも同じパターンで、一定の関係はあり、プレゼントをもらったということはあるが、広告目的といえないような表示であり、受け取った人の表示(投稿)が客観的状況に基づき自主的な意思と認められる場合には、事業者の表示にはならない。
④事業者が、インフルエンサー等に無償で商品⼜は役務を提供してSNS等への投稿を依頼するものの、インフルエンサー等が⾃主的な意思に基づく内容として投稿する場合
事業者がインフルエンサー等に無償で商品やサービスを提供しているパターン。その場合であっても、客観的状況に基づき自主的な意思と認められる場合には、事業者の表示にはあたらない。無償の提供があれば必ず関係があるというわけではなく、客観的な状況に基づき、第三者が自主的な意思に基づき行っているかどうかというところがポイントになる。
⑤事業者が購⼊者に対してレビューの謝礼として割引クーポン等を配布する場合、事業者と購⼊者の間で情報のやり取りが⼀切⾏われておらず、購⼊者が⾃主的な意思に基づき表⽰(投稿)内容を決定したと認められる表⽰(投稿)を⾏う場合
これも事業者との一定の関係があるパターン。謝礼としてクーポン等が配布されている。ただし、情報のやり取りは一切行われておらず、かつ第三者の自主的な意志による表示である。一定の関係はあるが、事業者の表示にはならない。
⑥第三者が、SNS上のキャンペーンや懸賞に応募するために⾃主的な意思に基づく内容として表⽰(投稿)を⾏う場合
プレゼント等、無償での提供とは違い、キャンペーンや懸賞ということで必ずもらえるわけではないが、何らかのメリットがあるという前提になっている。しかし、第三者の全く自主的な表示に基づく内容であれば、問題とはならない。
⑦事業者が、試供品等の配布を⾏った結果、受け取った第三者が⾃主的な意思に基づく内容として表⽰を⾏う場合
試供品ということで、プレゼントや無償提供と類型としては似ており、何らかのものを配ってはいるが、受け取った人はそれとは関係なく、自由意思に基づいて表示しているのであれば、事業者の広告とはならない。
⑧事業者とアフィリエイターとの間で表⽰内容に係る情報のやり取りが⼀切⾏われていない場合のアフィリエイト広告
事業者とアフィリエイターの間で、表示内容についてのやり取りが一切行われていない場合。そういうケースが本当にあるのかとも思うが、仮にあれば、アフィリエイターの自主的な意志に基づいた表示であり、その事業者の表示とはならない。
⑨事業者が第三者の⼝コミなどを利⽤する場合であっても、良い⼝コミだけを抽出せず変更を加えることなく、そのまま引⽤する場合
事業者が第三者の口コミなどを利用する時に、寄せられた口コミをそのまま提示するなど引用する場合。第三者の自主的な意志に基づく表現であり、事業者の表示にはならない。
事業者の表示となるかについては、①第三者と事業者の間の表⽰内容に関する情報のやり取りの有無、②表⽰内容に関する依頼・指⽰の有無、③対価の提供の有無、④過去の取引状況や将来の取引可能性等の実態、を踏まえて総合的に考慮し判断する。
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